ご依頼いただき武田信玄公の御位牌をお造りさせていただきました。
今年の4月にお造りさせていただいて今回が2基目になります。
そしてご依頼いただいたのは四代目市川猿之助様。
大河ドラマ「風林火山」で信玄公を演じられ、公に強い想いを持っておられます。
ご自身でも菩提を弔われるため今回のご依頼となりました。
総高25㎝と小さな御位牌ですが、細部までこだわり抜いてお造りさせていただきました。
ご納品時は他の話で夢中になってしまい、こだわった点等ご本人にしっかりとご説明できず…。
ここでは制作工程も含めしっかりと説明していきます(^^)
瑞雲。
札両袖には金色に輝く昇り、下り流。
正面には信玄公の御戒名を手彫りにて。
ここからは制作工程です。
使用した材は厳選した木曽桧。
一パーツが小さく鉋もかけずらいですが、慎重に形を成形していきます。
鉋で大方形が出たら、彫刻刀に持ち替えて細部の彫りの工程に入ります。
今回も漆を塗って仕上げる塗り位牌なので、塗って埋まってしまわないよう一つ一つ彫りを深く仕上げていきます。
木地が完成しました〇
ここからはうちの工房を離れて漆を塗る職人さんの元へ。
塗師(ぬし)さんの工房。
いつ来てもこの感じが美しい…。
飛び散る漆がジャクソン・ポロックの絵画のようで…絵になります(^^)
そんな環境でも塗りは精錬された手際と美しさ。
漆を塗っては研ぎ、を繰り返し漆の層を重ねていきます。
漆黒の位牌が完成です〇
この小ささでも角が立ち、シャープな仕上がりです。
実はこれ大変難しい技術で、このサイズだと多くの場合角が立たずドロンとした冴えのない仕上がりになってしまうものですが…素晴らしい技術。
次は文字彫りの工程。
これは私自ら彫り上げます。
書を習っておりましたので文字には少々こだわりがありまして…。
彫る際にも筆の運びを意識しながら一文字一文字丁寧に刻んでいきます。
文字彫りを終えると今度は箔押しの工程です。
こちらも金箔を押す(京都では貼ることを押すという)職人さんの元へ。
不覚にも工程写真撮り忘れました…(^^;
でも箔押しの技術も凄いんです、また次回…。
金箔を施し終わると再び当工房に戻ってきていよいよ最後の工程、彩色作業です。
こちらの工程は私自ら行います。
私は16年前に十一面観音様の彩色作業をお手伝いさせていただいたことをきっかけに仏師の世界に飛び込みました。
学生時代から絵筆は持っておりましたので、今でも状況によっては私自ら作業をするようにしています。
今回は押した金箔を残しながら龍を現わしていく技法で仕上げました〇
金具と武田家の家紋も取り付けて完成です〇
箱書きも。
良い字が書けたのではなかろうか…。
先日工房にお忙しい中猿之助さんが来てくださいました。
とても喜んでいただき、こだわり抜いた甲斐がありました(^^)
いろいろとお話もさせていただき、信玄公が繋いでくださったご縁に深謝する次第です。
昨今では量産されるようになってしまった御位牌ですが、今でもこだわり抜いた一点物の御位牌をご用命いただけるのは大変ありがたいことです。
こうしてご用命いただけることで技術を継承していけます。
これからも研鑽に励みながら至高の御位牌を求めて作り続けていきたいと思います。
京仏師 宮本我休 合掌
【宮本我休制作実績】制作実績 | 京都の仏師 宮本我休(GAKYU ガキュウ)