ご相談を受けたのは一年ほど前になります。
お寺様の山門前の桜の木が徐々に傾き、近隣の安全性を考慮しやむなく木を切ることになりました。
ずっとお寺と共にあった桜の木でしたので事情はあれど切ってしまったことに贖罪の気持ちを持たれていました。
そこで桜の木に対しての鎮魂からこの木で如意輪観音様を彫れないだろうかとお寺様から相談を受け、お造りさせていただくことになりました。
ある程度直径のある幹部分を残していただいていたので何とか身丈1尺ほどの如意輪さんを彫れるだろうと考えました〇
ただ切ってまだ間もないこともあり、この状態でお預かりし一年かけてゆっくりと乾燥させていきました。
いよいよ製材開始です〇
木というのは丸太のまま彫っていくと後々割れが入ってしまうため芯を除くように製材していきます。
いざ丸太を割ってみると大誤算でした…。
表面からはわかりませんでしたが丸太の中心から広範囲にかけて腐ってしまっています。
これでは像は彫れません…。
これをみると桜の木が倒れてきていたこともうなずけます。
おそらく何らかの影響で生命を終えようとしていたのかもしれません。
一縷の望みをかけて念のため予備で引き取っていた枝部分を製材していきます。
なんでも保険を掛けておくものですね…(^^;
枝部分は腐りもなく彫れる状態でした〇
ただ幹に比べて細い分、寄木(いくつかのパーツを結合していく)をして彫像していくことにします。
こちらは桜の木が華々しく花を咲かせていた頃の写真です。
毎年お参りされる方の目を楽しませていたのでしょうね(^-^)
今度は花を咲かすことはできませんが、仏として形を変え、お参りされる方を癒し救いを与えられるようなそんな如意輪観音様を現したいと思います。
京仏師 宮本我休 合掌
【宮本工藝制作実績】http://gakyu.jp/works