この小型鉾は昭和6年に当時の工芸の粋を集め作られたもので、囃子方の人形や鉾を形作る木組み、漆や織、染色といった多岐にわたる分野がそれぞれに高度で複雑に組み合わさっている工芸作品です。
そんな今作も長年の経年で劣化・破損し、今回株式会社岡墨光堂様からご依頼いただき、修復させていただくことになりました〇
この鉾は京都の企業様が所有されているもので毎年祇園祭の期間中、京都大丸で展示されます。
下の写真は昨年の展示風景です。
そんな高度な技術が組み合わさった作ですので今回特別に修復プロジェクトチームが結成されることになりました。
総指揮と染織の分野を岡墨光堂様が、鉾の木組みと人形の修復は私、下地の修復と漆塗りの作業を表望堂様が担当します。
先ずは人形の修復から。
数は合計112体にもおよび、一体一体玉眼が仕込まれ表情豊かに制作されています。
驚くことに舌や歯の細部までとても精巧で関節も違和感なく制作されています。
ただ造りが精密繊細にできていることで破損や経年劣化している箇所も多くみられ、どれも先端部分、特に手足の破損が顕著にみられます。
以下手の修復作業です。
土台となる桐材に手の指となる部分には細い針金が仕込まれています。
展示の時には楽器を持つ人形が多いので写真のようにどうしても擦れたりして破損しています。
そこに下地を施し、肉付けをしていきます。
肉付けをし、そこに彩色を施します。
新たに彩色した箇所は”古色”といって現状の経年変化を着彩により再現する方法で現状部分と馴染ませていきます。
古色後です。
こうすることでどこを直したのかわからなくなります。
逆にどこを直したのかわかってしまう修復は失敗といえます…(^^;
次に鉾の修復です。
解体できるところは解体し、新しい部材を足しながら強度を上げ、修復していきます。
今回この多岐にわたる修復の記録を京都女子大学・前崎研究室が担当されることになりました。
後の文化財級の本作を記録からしっかりと後世に残していこうとする取り組みです〇
この修復をはじめて二年目の祇園祭を迎えました。
今日は宵山、京都の町が一層にぎやかになりますね(^-^)
来年の祇園祭にはすべての鉾が修復完了となる予定です。
今年も祇園祭期間中京都大丸で展示されていますのでぜひお立ち寄り頂ければと思います☆