ご依頼いただき弁財天像をお造りさせていただきました。
ご要望は琵琶を奏でていることと、どこかに白蛇を表すこと。
滾々と湧き上がる水柱に坐し琵琶を優雅に奏でる弁財天様、そこに天衣に姿を変えていた使いである白蛇がその美しい音色に誘われるように姿を現す。
すぐに思い浮かんだのはそういった光景でした。
弁財天とは古代インド神話の神、サラスヴァティーを漢訳化したものです。
サラスヴァティーは河の名前にすぎませんでしたが次第に神格化され、川岸で行われる祭式の保護者として女神になったとされています。
後に言葉の神ヴァーチと結びつき、学問、叡知、音楽の女神となり最高神ブラフマー(梵天)の妃となった仏様です。
我が国では雄弁で技芸に優れる財福の神とされ、よく川や湖、池といった水と関連する場所に安置されますが、それは古代インドの水の神としての性質が残ったものと思われます。
坐す水柱はそういったところから着想しています。
像高約34㎝と限られた大きさの中でイメージを最大限具現化できたと思います。
琵琶もミニチュアサイズながら実際に絃を張って細部まで作り込んでいます。
本当に弾けそうな気がしてきます(^^;
天衣に扮する白蛇様。
ちょうど今年は巳年、ご縁を感じます。
思い浮かんだイメージを忘れないうちに即興で描いた素描です。
自分の知る限りこういった表現は他に例がありませんが、唯一無二の弁財天像として後世に残ってくれることを願います。
優雅に琵琶を奏でる御姿、そこには来世で音楽家になりたいという私の願望が少し入っているかもしれません。
【宮本我休制作実績】制作実績 | 京都の仏師 宮本我休(GAKYU ガキュウ)