今回の修復は達磨大師、大権修利菩薩、開山、祖師像4体の計7体の完全修復です。
7体全て彩色仕上げで、経年劣化で彩色が剥がれ、内部の木地の劣化も年月とともに進んでいる状態でした。
先ずは御仏像を解体し、表面の塗装を剥がしていく”洗い”作業から修復は始まります〇
解体すると御身の中から銘書きが見つかりました。
【寛保弐年 仏所 麩屋町通三条下る】と読めます。
寛保弐年は今から274年前 江戸時代中期 幕府は徳川吉宗の時代。
制作されてから修復している様子がなかったので、三百年近い年月を耐えてきたのだなと感慨深い思いでした。
洗い作業が終わると、それぞれ乾燥期間に入ります。
時間をかけてじっくり乾燥させることで後の木の割れや破損を防ぎます〇
乾燥期間が終わればいよいよ木地を組立ていきます。
それぞれのパーツごとに欠損している箇所は補填し、接着面を鉋で調整しながら組み上げていきます。
細かい調整作業は完成しても見えない部分にも及びますが、そういった所にも注力することで仏像自体の強度が保たれ、次の修復まで良い状態で残すことができ、長くお祀りいただけることにもなります。
仏像修復はいかに”見えない部分に力を注げるか”がとても重要になります。
全ての御像の木地修復が終わりました〇
ここからは塗り工程です。
今回は彩色仕上げですので、完成した木地の上に胡粉地(貝の殻を粉末にしたものと膠を練ったもの)を塗装していきます。
こうすることで木地も腐食も防ぎ、なにより彩色した時の色が鮮やかになります〇
今回は復元修復という元の状態に極力もどす修復方法をとったので、御像の衣の柄は修復前の状態とすり合わせながら欠落している部分は新たに描き起こし図柄を決定していきます。
柄の復元が終わると必要箇所には金箔を押していきます。
そしてここからは最終工程の彩色作業。
古来から使われている水干絵具や岩絵の具で着彩し、金泥で柄を描きこんでいきます。
数々の工程を経てようやく完成です◎
今回の修復は”復元修復”でしたので、270年ほど前に制作された時に使われた材料や技法を研究し、それと同じように復元していくことにとても苦労しました。
ですが制作された当時の状態にもどり、御像も制作された仏師さんも喜んでいただけたのではないかと思います〇
これからまた数百年後に修復され、そしてそのサイクルを繰り返し、未来永劫、御像の威光を放っていってもらいたいと思います。
仏師 宮本我休 合掌