大本山・妙心寺塔頭 養徳院様よりご依頼いただき、新たに建立される書院の扁額を制作させていただきました〇
書院の名は帯谷庵-たいこくあん。
書院の前に広がる庭の名前が帯流庭と言い、帯の様にしなやかな流れの渓流がやがて大きな流れとなる様をイメージして作られたお庭で、その流れが谷を作りその場所に建つ庵(いおり)という事で帯谷庵と命名されました。
庵には仏様を祀る場所という意味合いがあり、お寺の書院ということもあり十全にそこにあるという想いから軒とか亭ではなく庵を号されました。
そんな想いの詰まった名をケヤキの厚板に深く刻み込みました〇
これから制作過程を追っていきます。
先ずは直筆の書を確認し、バランスを考えながら少し微調整を加えて木に写していきます。
今回彫っていく木はケヤキ、堅剛で綿密な木質は扁額には最良の木です(^^)
お寺様がご用意してくださった木ですが、おそらく木の根に近い部分の材ではないかと思われます。
人も下半身に筋肉が集中するように、木も大きな身体を支えるために根に近い部分が強靭にできています。
ただ彫刻にあたってはとても硬くクセが強いので彫りにくいですが、その分強度が高いので上手く彫れば遥か先の未来まで遺すことができます。
刃を何度も欠けさせながら、より深く名を刻んでいきます。
過去に何度も古い扁額を修復させていただきましたが、浅く彫っている額は風雨で文字がほとんど消えてしまっています。
そういった経験から、当方ではなるべく深くキワのキワまで彫り込むことを心がけています。
一度彫り上げては、もう少し深く!また彫り上げては、やはりもう少し、と気持ちを奮い起こしながら刻み込みました〇
そのもう少し、で数日を要しますがこの数日が後の数百年を左右すると思うと妥協はできません(^^;
※文字彫刻は位牌の制作や修復で培った技術です。詳細はこちら↓
文字が彫りあがり岩絵の具による彩色作業に入ります。
動物性の膠での着彩は虫が喰って損傷を招くこともあることから今回は植物性の漆による着彩です。
色はいずれ褪せてくるものですが、彫刻と同様なるべく耐久力が増すように工夫します〇
完成です、印もしっかりと彫り込みました〇
今回ケヤキの堅剛な木に刻みましたが、刃が欠けては研ぎ、また欠けては研ぎ、を繰り返し気づけば鑿を2分(約6mm)ほど減らしました(^^;
ちなみに2分減らそうと思うと上手く使えば10年はかかります。
でも減らした鑿の分だけこの扁額を遠い未来まで遺せると信じています(^^)
書院の完成が9月の予定、掲げられる日が待ち遠しいです☆
【宮本工藝制作実績】http://gakyu.jp/works
※現在養徳院では老朽化した本堂の再建に向け「瓦寄進プロジェクト」を始動されています。ぜひ日本の文化財でもあるお寺の復興にご協力お願い致します。
詳細はこちら→養徳院「瓦寄進プロジェクト」