現在制作中の准胝観音像に内刳りを施しました。
「内刳り(うちぐり)」とはその名の通り仏像の内側を刳り抜いて胎内に空間を作ることを言います。
こうすることで木の割れを防いだり、重量を軽くし有事の際に持ち運びやすいようにします。
内刳りを施し出来た空間には「胎内物」と呼ばれる諸物を納めることもあります。
今回はなかなか見ることができない胎内の様子をご紹介し、仏造りの核心に触れていただこうと思います。
内刳りの様子です。
鑿で刳り抜いていきますが、最後は曲がり刃を使って丁寧に仕上げていきます。
見えない部分ではありますが、後世の方々に「いい仕事をしている」と思われたい、、職人としての意地ですね。
内刳り完成です。
今回は巻物と心月輪、仏舎利を入れた五輪塔を納めました。
巻物には准胝観音造立の旨や寄進者名、祈願願意等、約3メートルの和紙に一文字5㎜程の大きさでしたためられています。
お寺様の想いや寄進者の願いがこの巻物に詰まっています。
胎内心月輪です。
心月輪は仏の心。
水晶で作られた浄菩提心を表す満月輪を慈悲の蓮華で包み込みます。
「胎内に込めた心月輪が表す仏の浄菩提心と私等の心の中にある浄菩提心は何一つ変わる事が無く本来同一のものであり、その事に我々凡夫が気付き、今生において弘法大師空海が願われた即身成仏を実践し我々一人一人が世間へ光明を廻らせられる存在である事を知り仏としての命を生きて頂きたいと願っております。」
お寺様の想いです。
想いが詰まった心月輪を胸中に仏として新たな命が吹き込まれます。
仏像は信仰の対象物として人々の拠り所でありながら様々な想いを後世に伝える伝言者でもあります。
胎内が開かれるときは何百年後になるでしょうか、その時が平和であることを願うばかりです。
木地完成までもう少し、後世に残る尊像となるよう励みます!
【宮本我休制作実績】制作実績 | 京都の仏師 宮本我休(GAKYU ガキュウ)