この度約一年半という歳月をかけて達磨大師・大権修利菩薩像の修復が無事完了致しました〇
二尊ともとても珍しい金色の御像で、荘厳する必要がないほど御身から後光を放たれているようです。
お預かり時の状態です。
かなり経年劣化が進んでおり、おそらく制作されてから一度も修復されていないように思われました。
先ずはバラバラに解体し、湯につけ塗装を剥がしていきます。
洗い作業が終わればしばらく乾燥させます。
木肌が現れればこの御像を制作した仏師の技量がよくわかります。
二尊ともとても技量が高く細部まで綿密に彫りこまれています〇
銘書きは見つかりませんでしたが、おそらく当時特に有力な仏師が制作したものと推測されます。
今回虫食いによる損傷が特に激しかったです…。
表からは見えませんがバラバラにすると内部はスポンジ状態…(^^;
そういった所は新しい部材に取り換え元の彫りに馴染ませていきます。
和尚さん直筆!『報恩感謝』
玉眼に目を描き入れしっかりと固定します。
木地が組上りました〇
二尊とも身体のバランスが素晴らしく、特に大権像のなびく衣の表現などは秀逸で本当に風を感じさせます。
ここからは私の手から離れ塗りの作業、塗師(ぬし)と呼ばれる職人さんの仕事です。
金色の御像の場合、漆を塗って金箔を押す(貼る)のですが、その漆を塗るまでの下地作業がおそろしく手間がかかります…。
漆を塗ってしまえばわからなくなってしまいますが、後々割れや剥離が出ないようしっかりと処置していただきました〇
漆が塗り上がり漆黒の達磨大師・大権修利菩薩像が完成です〇
この状態もとても美しいです(^-^)
下地・漆作業の詳細記事は→http://gakyu.jp/information/news/2133.html
この高度な技と手間をぜひ知っていただきたい!
今度は漆の上に金箔を押していきます。
この作業は箔押し師と呼ばれる金箔を貼る専門の職人さんの仕事です。
この技もまたすごい…、およそ1万分の1mmほどの薄さの金箔を自在に操り、継ぎ目なく押していきます。
仏像は各分野の職人が高度な技を持ち寄り制作します。
それぞれの職人が技を出し尽くし相乗効果で美しい仏が現れる…手は抜けませんね(^-^)
最後に彩色師が彩色を施し完成です〇
達磨大師は龍、大権修利菩薩は獅子の柄を迫力ある生き生きとした表現で現していただきました。
先日御像の安置場所である岐阜県は関市にあります龍泰寺さんにお戻りになられました〇
やはりお堂に入ると御像がより一層威厳を放たれます。
この龍泰寺さんは幼稚園も併設されていて今回は特別に御像の開眼法要(仏様に魂を入れる法要)に園児も参加してもらいました〇
園児一同で唱える般若心経が可愛くて可愛くて…でもしっかりと唱えていましたよ◎
園児にはとても良い経験となったのではないでしょうか(^-^)
「いい子にしてたらまんまんちゃん守ってくれはるよ~」「でも悪いことしたら怒らはるで!笑」
最後は和尚さんとパシャリ☆
本当に貴重な経験をさせていただきました。
お預かりした時は今にも崩れてしまいそうでしたが…それぞれの職人が技を出し尽くし、見事に甦りました〇
これから数百年、金色の威光を放ち続けてくださると思います。
そしてまた未来の職人が御像を修復し、未来永劫美しい姿を保ち続けていただきたいです◎
京仏師 宮本我休 合掌
【宮本工藝仏像修復実績】http://gakyu.jp/tag/repair_buddha