ご依頼いただき個人蔵の阿弥陀如来坐像の修復を進めていきます。
阿弥陀仏の多くが右手を上げ、左手を下げた”来迎印”で表されることが多いのですが、今回の像はちょうど座禅の時の姿を表すような”定印”で、この印相は藤原、鎌倉時代に作例が多く、見るからに古い印象を受けます。
元は金色に輝くお姿でしたが、長年拝まれてきたことで煤けて独特の存在感を放っておられます。
先ずはお湯につけ、塗装を丁寧に剥がしていきます。
この作業はとても根気のいる作業ですが、仏の構造や作者の刀使いを学ぶ良い機会となります。
私も修行時代の当初はこの洗い作業ばかりしていました。
当時は退屈な作業に思えましたが、今となってはその経験が仏を造るうえで欠かせないものとなっています(^-^)
今回の像は小像ながら細部まで綿密に彫り込まれた優作であるということがわかります。
ある程度解体が進むと、御顔に仕込まれた”玉眼”を取り出す作業に取り掛かります。
御顔はこのように前後で別れるようになっています。
精密な寄木造りで造られていますね(^^)
御顔の裏側。
玉眼を凸に造形した木で固定されています。
古くから多くの玉眼佛にみられる固定方法です。
慎重に取り外します。
玉眼は通常黒目だけを裏から着彩し、真綿を詰めて白眼を表しますが、本像は胡粉を厚く盛って白眼を表すとても珍しい玉眼表現となっていました。
解体し、塗装を取り除いた状態です。
この状態で数カ月自然乾燥させ組み立てていきます。
今回は一度新しく修復し後に古めかしい状態に仕上げる”古色仕上げ”でのご依頼です。
仏像は修復を繰り返し保存していくものですが、数百年先の未来に良い状態で引き継いでもらえるよう時間をかけて内部からしっかりと修復していきます。
完成が今から楽しみです☆
【宮本工藝修復実績】http://gakyu.jp/tag/repair_buddha