先日嵐山祐斎亭にて虚空蔵菩薩お披露目と波紋音演奏会を開催しました。
構想から5年、ようやく完成した虚空蔵菩薩と近代打楽器の波紋音の音色が染色家・奥田祐斎氏が造り上げた唯一無二の空間で共鳴し、特別な時間となりました。
今回は京都にゆかりのある方々を厳選して招待し、完全クローズドなイベントとさせていただきましたが、特別な一日をここに記したいと思います。
嵐山祐斎亭・丸窓の間。
自然光と和蝋燭で御像を灯します。
弟子時代に制作した大日如来像。
波紋音奏者・永田砂知子さんによる演奏です。
波紋音は鉄でできた近代打楽器で大地の裂け目のような面を叩くことによって独自の音色を響かせます。
大小さまざまな波紋音を駆使してブッダの一生を奏でていただきました。
昼の部から夜の部に移り、和蝋燭の灯でより一層御像が引き立ちます。
時折強弱をつけながら揺らぎ灯される御像はまるでそこで息をしているかのようです。
今ではLED照明など安定した光の下で御像を眺めることが常ですが、昔はこのように厳かな蝋燭の灯でご荘厳していました。
現代の照明では彫刻が浅くても綺麗に仕上げればしっかりとした存在感をもって見ることができますが、和蝋燭の光の下では消えてしまいます。
彫刻を深く、濃淡を濃くしないと引き立ってこないのです。
蝋燭の煤が深く濃い彫刻に入り陰影をつけながら長い年月とともに御像を育てるんですね。
私はそこに仏像彫刻の妙がある気がしています。
和蝋燭職人の田川さん。
洋蝋燭と和蝋燭の違いなど興味深いお話を。
私からもこの虚空蔵菩薩についてのお話を。
5年前、実績もない若手の仏師に「いつ完成しても良いので思う存分造って下さい」と託していただいた。
工房の成長と共に常に傍らにおられたこの御像も来年初めにはお寺に嫁がれます。
最後にお披露目の機会をいただき大変有り難かったです。
奥田祐斎さんの染は自然と溶け込む。美しい…
最後に皆で。
良き一日となりました。
この日は中秋の名月で満月の前日。
綺麗な月が嵐山の夜空に煌々と輝いていました。