岐阜県・美濃市の善應寺様よりご依頼いただき、お堂の扁額と聯(れん)の修復をさせていただきました。
今回の修復は長年の経年劣化によって摩耗し消えつつある文字の彫り起こしと構造の補強作業、彩色のし直しが主となります。
どのように修復していったのか、工程を追っていきます。
文字はキワの部分を彫り下げ立体的にみせる彫刻法、俗にいう「かまぼこ彫り」で彫られていますが、風雨によって表面が摩耗し立体感がなくなっている状態でした。
小文字や印の部分は原形をとどめていない状態です。
堂内の柱に掲げられる聯も同様に表面の摩耗と彩色の欠落が進行している状態でした。
先ずは扁額の修復から。
表面の汚れを丁寧に取り除いていきます。
表層に残った塗装を一旦剥がしていきます。
古い塗装を残したまま再塗装すると強度が脆弱になってしまいますので、時間をかけて丁寧に取り除いていきます。
同時に木地入った割れを補修していきます。
深部まで接着剤を塗布しクランプでしっかり圧着します。
圧着を終えると、千切り(ちぎり)と呼ばれる蝶々型に成形した堅木を割れた個所に埋め込みます。
こうすることで再度の割れを防ぐことができます。
今回はケヤキの木で千切りを作りました。
しっかり埋め込むと見た目も良くなりますね(^^)
ここからはいよいよ文字の彫りなおしです。
提供していただいた資料を見ながら、彫られた当初の文字を復元していきます。
彫り手の癖を読みながら忠実に再現します。
大文字は数段深く彫り起こし、立体感が戻りました(^^)
小文字はほとんど消えかかっている状態でしたので、これからの摩耗に耐えれるようしっかりと彫り起こしておきます。
文字の彫り起こしを終え、最後に彩色作業です。
制作当初と同じ胡粉に合成樹脂を独自の配合で混ぜ合わせた塗料を塗布していきます。
特に屋外に掲げられる扁額は劣化が激しく、胡粉だけでは長年の経年劣化に耐えられません。
強度と美観、後の修復のしやすさも考慮して調合しています。
ここからは聯の修復です。
聯の方は特に木がやせて表層の凹凸が激しい状態でした。
小文字の部分は一文字一文字小さいですが根気強く細部までしっかりと彫り起こしていきます。
割れの部分の補強です。
木屎(木の粉と接着剤を練ったもの)を深部まで注入し補強します。
彩色作業です。
印の部分はほとんど原形をとどめていませんでしたが、資料を確認しながら彫り起こし、朱赤で鮮やかに仕上げます。
完成です!
修復前と後を見比べるとしっかりと文字が蘇ったのがわかると思います(^^)
扁額の方は先日お堂に掲げられました!
次の修復は100年後くらいでしょうか、立派な扁額と聯を後世に引き継いでいっていただきたいです(^^)
【宮本工藝修復実績】仏像修復 | 京都の仏師 宮本我休(GAKYU ガキュウ)