総金箔仕上げの達磨大師・大権修利菩薩像を修復しています〇
かなり損傷の激しかった木地の修復作業を終え、下地と漆を塗る作業に入っています。
ここからは私の手から離れ、塗師(ぬし)と呼ばれる漆塗り専門の職人さんにゆだねます。
この塗りの作業は木地と同様仏像自体の耐久性を保つ上で非常に重要な作業になります。いかに見えないところに手間をかけるか、労を惜しまない職人魂が問われます。
今回は信頼のおけるとても腕の良い職人さんにお願いしました(^-^)
先ずは複数ある割れ目に木屎(木の粉と漆を練ったもの)を充填していきます。
こうすることで木が動いた時に割れなどを防ぐことができます。
次に木地に漆を吸い込ませていきます。
こうすることで木地の細かい割れなどを埋め、強度を高めます。
全体に漆を塗りこみました〇
底面に麻布を貼り付けます。
特に底面は割れが起こりやすく、摩擦で摩耗するので麻布で補強しておきます。
継ぎ目や割れ目に布や紙を貼っていきます。
大きな継ぎ目は布で、顔の細かい割れなどは紙を貼り補強します。
ここでよおやく下地を施していきます。
下地は胡粉、膠、との粉などを混ぜ合わせたもので、丹念に刷毛で塗り込んでいきます。
次はさび(砥の粉+膠)付け作業。さびは木べらで肉付けしていけるので細かい段差を消すことができます。
全体にさび付けが終わりました〇
もう一度下地を施し、砥石で全体を研ぎあげます。
お顔など繊細なところは細かい砥石で入念に研いでいきます。
全体が研ぎ上りました〇
最後に中塗り、上塗りと漆を2回ほど塗り上げ仕上げます〇
漆は気温や湿度によって塗り具合が変わるので職人さんの勘と経験が問われます。
大権修利菩薩も見事に塗り上がりました〇
塗りの工程を見てきましたが、いかに工程が細かく分かれ手間がかかっているかわかっていただけたかと思います。
塗り上がってしまうとこの手間は伝わりにくいですが、数百年単位の耐久力を高めるためには木地直しもそうですがこの塗り工程も見えないところにどれだけ手間をかけれるかにかかってきます。
それにこの塗り作業で場合によっては表情などがガラリと変わってしまいます。
当時の仏師が造った表情をそのまま現すには塗師さんの造形力も問われます。
今回の二尊も見事に当時の面影が蘇りました〇
これから箔押し作業、彩色作業に入ります。
【宮本工藝修復実績】http://gakyu.jp/tag/repair_buddha
京仏師 宮本我休 合掌