総高は約46cm、身丈9寸の鬼子母神像。
像に銘書き等はありませんでしたが、彫刻の特徴と状態を鑑みておそらく江戸時代後期の作と思われますが、生き生きとした表情、指先の細部に至るまで綿密に彫りこまれた秀作です。
お預かりした時は長年の経年変化で彩色も見えなくなっていましたが、元の彩色を精細に調査して制作された当初の御姿に復元しました(^^)
修復前の状態です。
欠損箇所や虫による食害も多くみられました。
ここから修復の工程を追っていきます。
先ずは表面の塗装を洗い落とし、内部からきれいにしていきます(^^)
塗装を洗い落とした状態です。
仏身はお顔と手以外は一木造りで、数百年前の仏師さんが彫られた鑿跡がしっかりと残されいます(^^)
これから欠損部分の補填や組み立てを行っていきます。
鬼子母神様が持っておられるはずの吉祥果(ザクロ)が欠損していたので新たに新調します。
葉も付けた吉祥果、非常に繊細な造りです。
慎重に彫り進めます。
指も欠損していたので新たに補填しました。
鬼子母神様は子授けや安産、子育の仏様ということもあり左手に赤子を抱いておられます。
本像の赤子は右手を欠損している状態でしたので新たに彫り上げ補填しました。
赤ん坊の手ということもあり小さいです(^^)
ここからお顔の修復です。
お顔には玉眼が仕込まれていました。
水晶で作られた玉眼もきれいに洗い落とし、お顔に仕込み直していきます。
玉眼です。
落としたら見つけるのに苦労しそうなほど小さいです(^^)
慎重に取り付けます。
瞳の彩色を終えたら、元のように真綿と和紙を裏に仕込んで木型と竹釘で押さえます。
玉眼の仕込み完了です〇
ここからは台座の組み立て作業です。
長年の経年変化で歪んでいた台座もしっかりと直していきます。
鉋で面を整えます。
数百年前に切られた木ですが、鉋をかけると瑞々しい木肌が現れます。
改めて木という素材が持つ潜在能力の高さを実感します(^^)
木地の組み立てが完了しました〇
ここに胡粉地(貝殻+膠)を塗布し、研ぎあげて下地を完成させます。
宝冠や天冠帯、光背の金具も新たに鍍金をし直しました。
最後に彩色を施して完成です〇
色も制作当時の状態を再現し、金具も取り付けて神々しい御姿に戻られました(^^)
以下before、afterです。
before
after
本像は比較的小さいですが、彫りも細かく造形的にもとても優れた御像です。
一度も修復された形跡はなかったので、巡り巡ってご縁をいただき丁度このタイミングで完全修復できたことは御像を良い状態で後世に残すことを考えると本当に良かったと思います。
そして今回の鬼子母神像修復が宮本工藝本年最後の納品となりました。
このような素晴らしい御像の修復で今年を締めくくらせていただきとても嬉しいです(^^)
来年はどんな仏様とご縁を頂けるか、今から楽しみです☆
【宮本工藝修復実績】仏像修復 | 京都の仏師 宮本我休(GAKYU ガキュウ)