兵庫県豊岡市出石町の古刹・宗鏡寺が所蔵する維摩居士像を修復させていただきました。
長い間バラバラの状態でお寺に保管されていましたが、接合部を組み直し古色を施して古めかしい状態を保つ修復法で像容を整えました。
これから修復工程をご紹介していきます。
お預かりした時点での状態です。
接着剤である膠が緩み、接合部は全て離れている状態でした。
寄木造りの本像は細かいパーツで構成されています。
欠損部分も多いため、一カ所づつ木材を足して彫刻していきます。
彫刻も深く、技巧に優れた本像ですが、作者の癖を読みながら現存する形に合わせます。
本像は桧が使われているので欠損部には同じ桧を使用し、馴染みが良いよう木目も合わせて彫り進めます。
接合部には木屎(こくそ※接着剤と木の粉を練り合わせたもの)を充填し、表面を整えていきます。
像が組み上がりました。
これから古色をかけ、古めかしい状態を保ちながら像容の美観を整えます。
古色はこれまで様々な方法を試してきました。
今では修復したところがほぼわからないくらい精度が上がっています。
これからも新しい技法、材料を取り入れながら更なる高みを目指します。
ここからは古色ビフォーアフターです。
完成です。
バラバラになっていた状態から修復の痕跡を消し御像を蘇らせました。
先日お寺に納品させていただきました。
大変喜んでいただき良かったです。
久しぶりにお戻りになって心なしか御像もホッとされているようでした。
維摩居士像といえば興福寺の御像が有名ですが、仏像全体でみれば作例は非常に少ないです。
私もこれまで沢山の御像を修復してきましたが、維摩居士像を修復するのは初めてでした。
欠損部も多かったことから現状の彫刻をしっかりと観察・研究したこともあってこの御像の技巧の高さはもちろん、並々ならぬ想いで造られていることを感じ取りました。
興福寺像にも勝るとも劣らない秀作だと思います。
これほどの像でありながら、中には作者を表す銘書き等は見つかりませんでした…。
そういったミステリアスな部分もこの御像の魅力の一つかもしれません。
維摩居士はインドの豪商でお釈迦様のお弟子さんとしては唯一在家の身でありながら仏教の教義を極めた人物でもあります。
これからこの維摩居士像が在家の方々の信仰を集める象徴的存在として後世に引き継いでいってもらいたい思います。
【宮本工藝修復実績】仏像修復 | 京都の仏師 宮本我休(GAKYU ガキュウ)