京都日蓮宗寺院、蓮久寺の諸仏の修復が進んでおります。このたび愛染明王と四天王の完全修復が終わりました。
5体すべて彩色仕上げで、大きな欠損はないものの表面が煤けて彩色がくすみ、相応の経年劣化を感じさせる状態でした。
これから順を追って修復工程を記していきます。
まずは愛染明王です。
仏身の底面に銘書きがあり、天保13(1842)年の作と分かりました。
彩色はある程度残っていますが、全体的に煤けて特に衣部分の模様が判別しづらくなっています。また宝冠や持物もほぼ黒ずんでいて、向かって右上に掲げた蓮華は茎部分が欠損しています(向かって左上の手は持物の欠損ではなく空手です)。
修復するにあたり、はじめに像を解体し、お湯に浸けながら塗装を洗い落としていく作業を行います。
お湯につけると表面の煤が落ちて徐々に当時の彩色が蘇ります。復元彩色に向けて、先ずはこれらを詳細に記録します。
記録し終えるとブラシや彫刻刀を使って隅々まで塗装を剥がしていきます。
木地を傷つけないように慎重に作業を行います。
玉眼も注意深く取り外し、左右の取り違えがないようにしっかり保管します。
洗い作業が終わり全てバラバラの状態になりました。今後の組み立てを正確に行うために、蓮弁の順番や各部接合箇所には印をつけてしっかり記録します。
このまま芯までしっかり乾燥させます。
乾燥期間が終わると木地の組み立て作業に入ります。接合箇所それぞれに竹釘を仕込み、接着力を高めます。
隙間は木片で埋めて整えます。
欠損箇所を新調します。
光背は元のホゾ穴では自立しません(お預かり時点では後ろから鉄釘とビスを打ちこんで固定してありました)。
元のホゾ穴を利用して材を足し、新たなホゾ穴を削り出しました。
ホゾ穴が後ろに下がることで光背が自立しました。
玉眼を再納入します。残っている彩色をもとに内側から色を足し、その上に真綿を詰め、木片で押さえつけ竹釘で固定します。
木地の組み立て完成です!
続いて塗り作業です。ここからは塗師と呼ばれる漆塗り専門の職人の手に渡ります。
漆が塗り上がりました。
愛染明王のみならず獅子冠の歯の一本一本も埋まることなく仕上がっています。
厚さにすれば1ミリにも満たないのですが、実に10数回も塗り重ねてあります。職人の腕が光りますね。
ここからは彩色です。記録を元に色・図柄を復元していきます。
この時点で六本の腕は取り外せるようになっています。
こうすることで腕に隠れて描き入れにくい箇所まで綺麗に彩色を施すことができます。
ある程度彩色を終えたところで腕を接着し、もう一度塗師の方に戻して接合部分を馴染ませてもらいます。
「肩継ぎ」という作業で、再度同じ色で彩色を施して完成です。
黒ずんでいた宝冠や瓔珞、持物等も金鍍金により蘇りました。
慎重に取り付けていきます。
台座は箔押師の方に金箔を施してもらい、くすんでいた台座が見事に蘇りました。
また今回の修復の旨も加え仏身底面の銘書きを改めて木札に書きおこし、台座の裏に接着しました。
愛染明王、完成です!
つづいて四天王の修復工程です。
上から持国天、増長天、広目天、多聞天です。
岩座部の劣化が顕著で、虫食いによってスポンジ状になった木地が露出しています。光背の火炎や持物や宝冠など、金物の折れや欠損も目立ちます。
彩色も経年劣化を感じますが、それでも色彩豊かにさまざまな模様が各部に散りばめられた豪華なお像であることがよく分かります。
それぞれの背中には銘書きがあり、いずれも天保13(1842)年の作と分かりました。愛染明王と同様、後で木札に書き起こし修復後の台座に仕込みます。
以降の大まかな流れは愛染明王と同じです。
以前の修復で使用されていたビスねじは取り除きます。
まずは解体・洗いの作業です。彩色の記録をつけながら表層の塗装を全て剥がしていきます。
4体全て玉眼になっているのでそれぞれ慎重に取り外します。
全て解体できました(写真は1体分)。
しばらくの乾燥期間を経て、木地の組み立てです。
後に「肩継ぎ」をするので各腕は竹釘を仕込んで付け外しができるようにします。
細かい欠損箇所は木屎(木屑と接着剤を練ったもの)で埋め、表面を整えます。
光背の根本部分です。釘で台座に留められていたのですが、金属と木は相性が悪く、このように釘の周りから腐食していきます。
腐食した箇所は切り落とし、新たに材を足して補強します。
さらに愛染明王と同様に新たな光背のホゾを作り、釘なしで自立するよう調整します。
玉眼も同様の手順で再納入します。
木地の組み立て完成です!
このまま塗師の方に引き渡し、塗りの工程に入ります。
漆が塗りあがりました。損傷の激しかった岩座の流木も、虫食い痕を埋めしっかり漆で塗り固められました。
また洗いの段階で台座の一部に文字が遺されているのが分かり、お寺様の意向であえて塗らずに仕上げてもらいました。
彩色作業です。岩座には苔の表現が欠かせません。
仏身に復元彩色を施します。肩継ぎに向け、最終的には大方隠れる部分にもしっかり柄を入れていきます。
肩継ぎのビフォーアフターです。手間はかかってしまいますが、やはり彩色の完成度を高めるためにはこの工程は必須です。
ではここから仕上げに入ります!
金物も新たに新調と金鍍金を施すことで本来の輝きを取り戻しました。
各パーツを慎重に取り付けていきます。
天冠帯は元々上向きに取り付けられていましたが、お寺様に確認をとり通常の方向に戻しました。
それぞれの台座の中に木札を固定・接着しました。
四天王、完成です!
少しトーンを落とした極彩色。それぞれ色鮮やかに蘇りました。
先日の納品の様子です。本尊および内陣を守護する諸尊が元の場所に戻りました。
蓮久寺様からの修復のお預かりは残り3体。
どれも珠玉のお像ばかりですが、すべてのお像が揃った際に蓮久寺様の荘厳な内陣を美しく彩ることができるよう、引き続き丁寧に作業を進めて参ります。
【宮本工藝修復実績】仏像修復 | 京都の仏師 宮本我休(GAKYU ガキュウ)
