今回は在家の方から家の建て替えのため、やむを得ず切られた桜からマリア観音様とわらべ像を現してほしいとご依頼をいただきました。
詳しくお話をお伺いすると、事情はあれど切ってしまったことにとても強い贖罪の念を持たれていて、桜の一部をずっと自宅に保管しておられたようです。
【平成26年作 マリア観音】
どうにか桜の供養になればと考えられていたところ、私が以前制作したマリア観音様をご覧になりこのような仏様を彫像してもらえないかとご相談いただきました。
切って間もないこともあり、一年ほどかけてゆっくりと乾燥させていきました。
桜の木は暴れて割れることもなくとても良い状態です〇
私の工房は京都西山の裾野にあり東には桂川が流れます。
山からの湿気を帯びた新鮮な空気と桂川との距離感で一年を通して湿度が一定で安定しています。
場所によっては乾燥が激しく、音を立てて木が暴れ、割れたりすることもありますが、この地はそういったことがほとんどありません。
木を扱う仕事ですのでそういったことを考慮してこの地を選んだのですがもう4年を過ぎましたがとても良い環境だなあとしみじみ感じております(^-^)
乾燥も進んできたのでいよいよ原型づくりです〇
今回は木も良い状態で残しておられたので、桜の木を最大限に活かせる一木造りにて制作することにしました。
一木造りとは寄木などつなぎ合わせる加工はせず、一つの塊のまま彫りあげる技法です。
寄せ木造りに比べて表現の幅は狭まりますが、その分木の中から現れてくるような神聖な表現が可能となります。
一木造りは後に割れが起こらないように十分に乾燥させる必要がありますが、木に負担を与えにくいのも利点の一つです〇
原型が完成しました〇
左手に桜の花を咲かせた枝を持ち、それをそっと優しく見つめるお姿です。
この原型では持たせていませんが、枝は桜の木からマリア観音へと魂を繋ぐ象徴とします。
お座りになる台座は桜の持つエネルギ―が下から湧き上がる気流のようになるようイメージしています。
マリア観音は日本の観音様とマリア様の容姿が似ていることから両者ともを融合して信仰された仏様です。
薄いベールの下には観音様の特徴でもある頭髪を高く結わえる髻(もとどり)が隠されています。
桜が咲き誇っていた頃の写真です〇
毎年ご近所の皆さんの目を楽しませていたようです(^-^)
このように花を咲かせることはできませんが、マリア観音としてもう一度命を吹き込みたいと思います。
完成まで一刀三礼の想いで刻んでいきます。
京仏師 宮本我休 合掌
【過去の制作実績】http://gakyu.jp/works
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