臨済宗大本山・南禅寺様からご依頼いただき大光禅師・夢窓国師・天海大僧正・聖徳太子像を修復させていただきます。
四体の内、大光国師、夢窓国師像は制作された当初の状態に戻す完全復元修復(新調修復)です。
御像の保存、技術継承の上でも非常に有意義な修復方法になります。
像高約100㎝の大光国師像です。
南禅寺第八世の住持となられた方です。
まるでそこで息をされているかのような素晴らしい造形ですが、長年の経年劣化で表層の剥離、亀裂が多数見受けられます。
同じく像高約100㎝の夢窓国師像です。
夢窓国師は大光國師に次いで、南禅寺第九世の住持となられた方です。
こちらは大光国師像に比べてより劣化が進んでいて、補助材がないと姿形をとどめることができない状態です。
像高約60㎝の天海大僧正像です。
天海大僧正は安土桃山時代から江戸時代初期にかけての天台宗の僧。
こちらは比較的状態も良く、剥離部分を修復し古色で馴染ませる現状保存修復で修復します。
仏身総高約18㎝の聖徳太子像です。
こちらも表層の剥離が多数ありますが現状保存修復をとります。
この御像の表面は下地材を彫刻する削り出しが施されています
これまで数百体の仏像を修復してきましたが、この表現は初めてです。
剥離部分に下地を施し、同じように彫刻し古色で馴染ませます。
修復方法には大きく分けて経年変化した状態を維持する「現状保存修復」と制作された当初の状態に戻す「完全復元修復」があります。
現状保存修復は経年劣化もその御像の歴史の一部と考える修復方法で、全体に再塗装は施さず、剥離箇所を繕うことでなるべく現状を保持するよう努めます。
この修復方法や考え方について理解をしていますし、古色などの現状保存修復のためのスキルを日夜磨き続けています。
ただこれはより高い精度で漆を塗り上げる技術や金箔を施す技術などは必要とせず、専門職の手を借りることなく全て当工房で完結してしまいます。
最後に古色をかけて経年劣化を人為的に作り出すため、そこまでの精度は必要としないのです。
これは技術継承を考える上では大変由々しき問題なのです。
このまま専門の職人が腕を振るう機会が減少すれば、いざ新調で御像を制作する際に高い完成度が保てなくなってしまいます。
全てを完全復元で修復したい、という考えはありませんが、選択肢の一つとしてご検討いただく必要はあると思います。
今回清水寺様の毘沙門天像に続き、南禅寺様からも大変貴重な御像を完全復元修復(新調修復)でご用命いただきました。
こういった影響力のあるお寺様が一部完全復元修復をご決断頂いたことは今後の仏像修復のあり方を考える上で大変重要な指針となりそうです。
考古学的価値と信仰の対象物としての意義、そして美観の保持と技術の継承、それぞれの考え方に理解を深めながら現状保存と完全復元の両修復技術をこれからも磨き続けます。
【宮本工藝修復実績】仏像修復 | 京都の仏師 宮本我休(GAKYU ガキュウ)
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