この度広島県呉市、萬年寺様よりご依頼いただき、虚空蔵菩薩をお造りさせていただきました。
身丈は1尺2寸で総高約90㎝。
木彫はもちろん、漆、箔、金工、截金、彩色と最高の技を持ち寄って、この令和の時代に不変不滅の御姿を現すことができたと思います。
今回彩色の上に截金を施しました。
仏教伝来と共に伝わった截金の技は今でも脈々と受け継がれています。
七宝や麻の葉、立涌といった古典文様を随所に施しました。
五智宝冠は金工師にお願いして特注で制作いただきました。
五智如来を表す梵字は一つ一つエッチングで立体的に表しています。
智慧を表す火炎宝剣も一つの木から彫り出し、漆箔で仕上げました。
小指を少し上げて力を抜いた持ち方は、人を傷つける武器ではないことの証です。
ここからは制作工程を追っていきます。
上の画像は鑿入れ式を控え御姿を描き入れた中心材です。
鑿入れ式を終え、中心材を組み入れて寄木を完成させます。
ここからいよいよ彫刻開始です。
私の場合、御顔から掘り出していきます。
良い御顔が出てくると、その後ずっと良い精神状態で彫り進むことができます。
今回も早い段階で良顔が現れました。
御顔が現れると後は迷いなく進みます。
手の彫刻。
力を抜いた小指がポイントです。
大方形が出てきました。
ここから細部の彫刻と台座光背の制作です。
台座が組み上がりました。
全体のバランスを見て微調整を加えます。
火炎宝剣の制作です。
一本の木から彫り出します。
剣を持つと一気に威厳が増します。
今回仏身胎内に「能作性」を納入しています。
能作性とは人為的に作り出した如意宝珠のことで、古来から伝わる厳格な作法に則り生成されます。
私も存在は知っていましたが今回実物を見るのは初めて。
約50名の僧侶が修法し作り出され能作性、物理的な重さ以上に、ずっしりとした重みを感じます。
彩色の作業です。
截金が最も美しく見えるよう工夫しながら塗り上げます。
宝冠、胸飾りが完成し装着です。
より美しく荘厳されていきます。
截金が完成し、宝剣を持たせます。
台座光背も組み上げて完成です。
先日開眼法要が執り行われました。
木彫から仏に変わる瞬間、無事お納めできた安堵感も相まって何度立ち会っても清々しい気持ちになります。
最後に御住職と。
この度巡り巡って大変ありがたいご縁をいただきました。
虚空蔵菩薩は今回で二作目となりますが、極彩色に截金というまた新たな試みも最高の形で具現化できたと思います。
これから地域の人々に愛され、心の拠り所となる尊像としてあり続けてほしいと願います。
また一つ丹精込めて造り上げた作が手元を離れました。
余韻に浸りたいところですが、完成を待つもの、未だ形を成さないもの、有難いことに多数控えます。
そういった作を最高の形、至高の仏として送り出せるよう、造仏三昧の日々に戻ります。
楽しみだ☆
合掌
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