今回京都の市川甚商事株式会社様からご依頼いただき、創業者である市川甚三郎様の肖像彫刻を制作させていただきました〇
明治の方ですので面影を残すものが正面のモノクロ写真一枚のみ。
その写真を参考にしながら油土で原型を制作し、その原型を基に木彫りで仕上げました。
創業者らしく進むべく上方を一点に見つめる目には強い意志を、皮膚のしわや肉付きからは苦労して歩んできた歴史を刻みました。
銅像ではなく木彫による肖像彫刻は木ならではの温もりがあり、年輪とその人物が経てきた歴史が一つとなり独特の神秘性と表現が可能になります。
木が持つポテンシャルを最大限に活かすことを心がけました〇
実はこういったリアルな人物像はあまり制作したことがありませんでした。
意図的に距離を置いていた、という方がいいかもしれません…(^^;
というのも人体を研究し、写実性を追求しすぎると仏を彫る際にどうしても生々しさがでてしまい拝む対象としてはアクが強すぎるものになってしまいます。
仏像はあくまでも信仰の対象物、人を超えた超越的な存在であり、その神々しさに思わず拝み、すがってしまうようなそんなお姿でなくてはならないと考えます。
そこに人間臭さが漂えばそれは仏ではなく美術品ではないのかと思うのです。
しかし仏も人体を基礎として体系化していることは間違いありません。
仏を彫るには少なからず骨格や筋肉といった人体構造の知識やイメージは必要ですし、何より私が追求する衣紋表現(仏がまとう衣の表現)には写実的な要素を取り入れていることも事実です。
ただ追求しすぎないこと、人体研究や写実性とは”良い距離感”が必要なんです。
あとは自分の中にある仏性が仏を現すのみです(^^)
……しかし!です。
やはり彫刻をしているものであれば思いっきりリアルを追求してみたい!と思うものなのです…(^^;
そんな折、運よく今回のご依頼をいただくことになり、今まで押さえつけていたものを一気に解放させていただきました(笑)
何せ写真一枚しか手がかりがありませんでしたから先ずはお孫さんにあたる現社長様からヒアリングし、外見はもちろんどういった性格であったか、会社を興したヒストリーや家族構成、思想信条に至るまで徹底的にお聞きしお姿を構築していきました。
【これまでの制作過程】①http://gakyu.jp/information/2013.html
②http://gakyu.jp/information/works/3092.html
今制作を始めるにあたり心がけたことは”仏師として肖像彫刻を彫ろう”ということ。
つまり仏として彫ることで信仰の対象物としての御尊影となり、まさに”神々しく思わず拝みすがってしまう”そんな肖像彫刻を目指しました〇
迷ったときは道を示し、そっと背中を押してくれるようなそんな存在であり、そして会社の守り仏となって未来永劫見守ってくれるよう想いを込めてお造りさせていただきました(^^)
今回の経験で頂相彫刻といわれる歴代僧侶の生き写しのような像に挑戦してみたいという想いがより強くなりました。
東大寺の重源像や一休寺の一休禅師像など頂相彫刻の名作がありますが、いづれそういった高みを目指してみたいです。
そんなご依頼が来ないかなぁと願いつつ…(笑) またこれから切り替えて写実性とは”良い距離感”を保ちながら仏を彫り続けたいと思います☆
【宮本我休制作実績】http://gakyu.jp/works
仏像・位牌の彫刻・修復、木彫に関するお問合せ
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平日9:00~17:00(定休日:日祝)宮本工藝
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