鎌倉市の日蓮宗寺院・本龍寺様よりご依頼いただき雨乞日蓮聖人像慈雨ノ厨子を制作させていただきました。
お寺には雨乞い願満の日蓮聖人像が祀られていますが、御像を納める厨子がなく、この度の御依頼となりました。
その日蓮聖人像をお納めするためだけの唯一無二の特注厨子です。
鎌倉時代、文永8年に鎌倉は極度の大旱魃が続き、田畑はやせ細り、人々は苦しんだと云われます。
鎌倉幕府は策を練るものの思うようにいかず、当時生き仏として知られた極楽寺の忍性に雨乞いの祈祷を命じ、7日間の雨乞いの祈祷が行われました。
結果、忍性は多くの弟子と共に祈祷をはじめたものの、一向に雨は振らず、唯々日にちだけが過ぎていきました。
万策尽きた幕府でしたが、その翌日、日蓮聖人は現鎌倉市七里ヶ浜の田邉ヶ池で雨乞い祈祷をすると、数ヶ月に渡ってほとんど雨雲を見なかった天は忽ちに雲で覆われ、大雨が降り始め、万象ここに甦りをみせたと伝わります。
その伝承を元に制作したのが今回の「雨乞日蓮聖人像慈雨ノ厨子」です。
厨子最下部の刳形(凹み彫刻)は、雨を渇望する民衆の祈りを表した合掌型です。
厨子上部には聖人の法力に呼応して、雲に覆われ、雷鳴が鳴り響く様子を表します。
そして扉を開くと一頭の龍が出現し念願の雨を降らせます。
この龍は浮かし彫りで彫刻し漆箔で仕上げました。
先日お寺に納品してきました。
雨乞い満願日蓮聖人像も無事お納めすることが出来ました。
御顔が少し雲に被るように設計していましたが、ぴったりです(^^)
金色に囲まれることで黒色の聖人像もより引き立ちます。
そこまで大きくはない御像ですが、衣の流れや細部の造形が素晴らしく、何より雨を一心に祈願する聖人の鬼気迫る表情が秀逸です。
この御像の背景にあるストーリーを御厨子の意匠で知っていただければという想いで制作しました。
日蓮聖人が残された功績がこの御厨子を通して、これからも語り継がれていくことを願っています。
最後にご住職と。
ちょうど四年前、ご住職と一緒に鎌倉にある日蓮聖人の史跡を巡らせていただきました。
鶴岡八幡宮→妙本寺→安国論寺→妙法寺→田辺ヶ池(雨乞い祈祷の地)→龍口寺、と、日蓮聖人法難の地を巡り、聖人に想いを馳せながら御厨子のイメージを固めていきました。
あれから四年、無事お納めすることができ、そして大変喜んでいただけて感無量です(^^)
仏像彫刻の技術を生かせばアイデア次第で如何様にも造ることができます。
情報、物が溢れる現代だからこそ、一点物の価値を伝え残していきたいです。
またこういったご依頼に応えられるよう、研鑽を積んでいきます。
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