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ホーム > 新着情報 > お知らせ > 壬生寺地蔵菩薩像の修復。

京都・壬生寺様よりご依頼いただき地蔵菩薩坐像を修復させていただきました。

このお像は壬生寺中院で偶然発見されました。

残念ながら記録には残されていないものの、台座裏に「正徳二年」の記載があり、およそ300年前の作と推察されます。

昭和の火災で失われた旧本尊、いわゆる「縄目地蔵」に御姿が酷似している大変貴重な作です。

お預かりした時点での状態です。

光背と持物は発見されず、その一部も残っていません。

台座や仏身には大きな欠けはありませんが、それでも指の先端に欠損が見られるほか、表層には剥落・亀裂が広がり接合面が剥離した箇所もあります。

今回の修復では、像を解体し制作された当初の状態に戻す「完全復元修復」ではなく、剥離箇所や欠損箇所を補修し彩色によって古めかしい雰囲気を保つ「現状保存修復」という修復法で像容を整えます。

また光背と持物を新調していきますが、特に光背は「壬生寺型」と呼ばれる独自の形での再現を試みます。

ではここから順を追って修復工程をご紹介していきます。

まずは表層の修復です。

漆の劣化により塗膜全体に亀裂が生じ、大きくめくれ上がっています。

一旦剥落止めを施し、亀裂の広がりを防ぎます。

↑剥落止め後

剥落が進んでいる箇所は、補修して表面の凹凸をなくし古色で馴染ませます。

↑補修後

↑古色後

続いて指の修復です。欠損部分に木材を接ぎ、現存の彫りに合わせて形を出していきます。

左手の薬指先端が復元できました。後ほど古色を施し馴染ませます。

右手の小指も同様の作業を行います。

先端が復元できました。

続いて台座の修復です。

台座最下部の框は膠が劣化して接着力が弱まり、バラバラの状態でした。

水平をとりつつ、各パーツしっかりと接合しなおします。

岩座は接合部が剥離し、隙間が目立っていました。

木片で埋め、形に合わせて削っていきます。

細かい隙間も木屎で補填し、表面を整えます。

最終的に古色で馴染ませていきますが、その様子は次にまとめてお見せします。

続いて古色作業です。古色とは経年劣化を彩色で表し新補箇所を違和感なく馴染ませる技法です。

単純な経年変化だけではなく、煤や埃による色や質感の変化も加味して色を塗り重ねます。

ではここからビフォーアフターです。

before

after

before

after

before

after

続いて光背・持物の新調作業に移ります。それぞれ相応のものを新たに彫刻し、漆箔を施して仕上げます。

まずは光背です。先述の通り、壬生寺に現存する作に倣い代々伝わる独自の形で復元していきます。

ある程度の形ができあがると細かい彫刻作業に入っていきます。

壬生寺型光背では梵字と唐草模様があしらわれます。

放射光です。二本・三本と交互に配するのも独自の特徴です。

壬生寺型光背には背もたれのような部分がありますが、こちらはその装飾パーツになります。

壬生寺型光背の特徴の一つでもある柱に刻まれた六地蔵。

非常に小さいですが、御顔や錫杖、衣もできる限り綿密に彫り表します。

木地が完成しました!

続いて持物です。

右手に持つ錫杖です。

左手に持つ宝珠です。

光背・持物の彫刻が完成しました。

ここからは漆箔の工程です。

漆を塗り終えました。細かい彫りをつぶさないよう際立たせて仕上げました。

金箔を施し終えました。

当初はここから古色を加えていく予定でしたが、打ち合わせの末、この金色に輝く状態で完成としました。

箔を傷つけないよう慎重に組み上げていきます。

錫杖の遊環もしっかり取り付けます。

 

完成です。

やはり壬生寺型光背を背負うとより威厳が増しますね。

神々しく光り輝く光背もまた時間と共に熟成していき馴染んでいくと思います。

過日のご納品日の様子です。地蔵菩薩の御縁日に合わせて壬生寺本堂にて開眼法要が厳修されました。

無事に御入魂されました。

お堂の光の中では光背がさらに輝き地蔵尊の重厚感も増すように感じます。

今後はお像が見つかった中堂にお戻りになるとのことで、ご本尊と並んで見られた貴重な瞬間でした。

改めて今回は特別なお像の修復というご縁をいただき大変ありがたく思います。

また、壬生寺型光背の制作は多くの学びを得る素晴らしい機会になりました。

これからも様々な作に学びながら、一体でも多くのお像を次世代に残すことができるよう精進してまいります。

【宮本我休修復実績】仏像修復 | 京都の仏師 宮本我休(GAKYU ガキュウ)

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