神仏彫刻の用材として使われる木曽檜。
木曽檜とは長野県と岐阜県にまたがる木曽谷地域において、厳しい自然環境下で自生する天然のヒノキのことを指します。
傾斜が険しい木曽の山は、雨が多く、特に冬は厳しい寒さと深い雪に覆われます。
そんな厳しい自然環境の中、木曽檜は他の場所で育つ檜の何倍もの時間をかけて、ゆっくりと生長していきます。
そのため木曽檜は繊維が緻密で木肌が美しく、神仏彫刻に最適な用材となります。
仏師として使い続けた木曽檜の故郷を訪ねる旅、今回で二回目となります。
森に入ってまた新たな気づきがありました。

澄み切った水。
昔はこの川をせき止めて一時的にダムを造り、それを決壊させてその水の勢いで材木を下流まで流していました。

木曽檜の森。
ご覧の通り、多種多様な樹種が混在しています。
競争も激しく、栄養分が少ない土壌、この森で生き残れるのは選ばれた木のみ。
そんな厳しい環境が強く美しい木曽檜を育てるんですよね。

木曽檜の実。
この実から種子が飛んで切り株に付着し、その切り株を母樹として育ちます。

母樹に自生する木曽檜の苗木。
こう見えてこれで30~40歳!
一つの母樹にこういった苗木がいくつもあって、その中でまた競争を繰り返し勝ち残った1本が木曽檜として育ちます。
とても厳しい世界…。

やがて母樹は役目を終えて土にかえります。
そうするとこのように根上木としてトンネル状に育つんですね。
母から子への世代交代、この景色を見ると自然の神秘を感じます。

樹齢300年を超える木曽檜。
この木もやがて役目を終えて母樹となる日が来るのでしょうか。

木曽檜の伐採は平安時代には始まっていたとされています。
江戸時代前期の過度の伐採により、木曽地域の山々は荒れてしまったようです。
当時の尾張藩は「木一本、首一つ」とも呼ばれる厳しい森林の保護政策をとりました。その甲斐もあって、長い年月を経て木々が生い茂る今日の山々へと回復していきました。
現在も厳格な管理のもと伐採と更新を繰り返しています。

木曽谷の檜は、細胞壁が緻密で年輪幅が細かく、反り・曲がりなどの狂いや割れが非常に少ない木材です。
特筆すべきはその耐用年数の長さ。
伐採後、数100年に渡り強度を増していき、千年以上気の遠くなるような時間を経て伐採時の強度に戻るといわれています。
木質と強度、その優れた特性は神仏彫刻において替えの利かない用材なんですよね。
これからも一刀一刀大切に神仏を現したいと思います。
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