この小型鉾は昭和6年に当時の工芸の粋を集め作られたもので、囃子方の人形や鉾を形作る木組み、漆や織、染色といった多岐にわたる分野がそれぞれに高度で複雑に組み合わさっている工芸作品です。
そんな今作も長年の経年で劣化・破損し、この度修復させていただくことになりました。
7基ある鉾を1年に2,3基づつ修復し、今年で3年目を迎え全て修復を終えることができました。
これから修復の内容をご紹介していきたいと思います。
先ずは人形の修復から。
数は合計112体にもおよび、一体一体玉眼が仕込まれ表情豊かに制作されています。
驚くことに舌や歯の細部までとても精巧で関節も違和感なく制作されています。
ただ造りが精密繊細にできていることで破損や経年劣化している箇所も多くみられ、どれも先端部分、特に手足の破損が顕著にみられます。
土台となる桐材に手の指となる部分には細い針金が仕込まれています。
展示の時には楽器を持つ人形が多いので写真のようにどうしても擦れたりして破損しています。
そこに下地を施し、肉付けをしていきます。
肉付けをし、そこに彩色を施します。
新たに彩色した箇所は”古色”といって現状の経年変化を着彩により再現する方法で現状部分と馴染ませていきます。
古色後です。
こうすることでどこを直したのかわからなくなります。
逆にどこを直したのかわかってしまう修復は失敗といえます…(^^;
次に鉾の修復です。
解体できるところは解体し、新しい部材を足しながら強度を上げ、修復していきます。
今回この多岐にわたる修復の記録を京都女子大学・前崎研究室が担当されることになりました。
後の文化財級の本作を記録からしっかりと後世に残していこうとする取り組みです〇
学生の皆さんとても伝統技法に興味津々で熱心に書きとっておられました。
こうして技術が伝わっていくのは我々職人にとっては大変ありがたいことです(^^)
今年で修復を開始して3年目、無事全ての鉾を修復することができました〇
非常に高い技術で作られている鉾や人形の数々、作られた職人さんの高い技量に合わせて修復していく作業は困難を極めましたが、しっかりと次の世代に引き継いでいけるようお直しすることができました(^-^)
今年も例年通り京都大丸にて展示されました〇
ただ今年は新型コロナウイルスの影響で祇園祭が一部の神事を除き中止となってしまいました…。
祇園祭が中止となるのは58年ぶりだそうです。
京都に生まれ長年京都に住んでいますが祇園祭のない京の夏はなんとも寂しいものです(^^;
ですがこの小型鉾によって往来の方々に祇園祭の風情を感じていただけたことはとても意義深いことだと思います。
来年は平常に戻り、コンチキチン♪の音色が京の町に響きわたることを切に願っております◎
【宮本工藝修復実績】https://gakyu.jp/tag/repair_buddha
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