払子(ほっす)とは元々虫などを払う道具が仏教に取り入れられ後に法具となったもので、僧侶の方が法要や説法の時など威儀を正すために用いられます。
今回はそんな払子の柄に髑髏を彫り込んでほしいというご依頼を受け、制作させていただきました〇
正直、髑髏!?と驚きましたが、よくよくお話を聞くとご依頼主は室町時代の臨済宗の僧侶「一休宗純」そう、あのとんちで有名な一休さんを敬愛されていて髑髏の払子を作ってほしいとのこと。
一休さんと髑髏??となりますよね…(^^;
ですがあのアニメでは可愛らしい一休さんとおどろおどろしい髑髏には実は深い関係があるのです。
「門松は冥土の旅の一里塚 めでたくもあり めでたくもなし」
この言葉は一休さんが正月に頭蓋骨を持ち街中を歩いたという逸話にあります。
「新しい年を迎えるということは、死に一歩近づくということ。正月の何がめでたいものか」ということなのですが、昔は年齢を数え年でカウントしたため、年が明けると皆が1つずつ年をとることになります。
つまり全員が「死」に一歩近づく正月がめでたいはずがない、ということです。
そしてどんな身分の人でも必ずくる死に向かって、一時一時を無駄にすることなく大切に生きよう、という一休さんのメッセージが込められているのだと思います。
この払子はそういった一休禅師の想いと仏教的思想を込めて造らせていただきました(^^)
ご依頼主のご要望で木の根に埋もれるように髑髏を配してほしいということだったので、タイの「アユタヤ遺跡」にある木の根に絡められた仏頭をイメージして彫り上げました。
他に木のウロにあたる部分には小さい髑髏を2体彫り込んでいます。
柄には堅剛なミズメザクラの木を使い、重厚感と使用に耐えうる高い強度を持たせています〇
昨今の仏具は形骸化が進み、独創的なものが作られることは少なくなってきました。
ですが正倉院の中の仏具にもあるように、実は昔の方が独創的でデザイン的にも優れたものがたくさん作られています。
独創的なものを作りだすときには多くのエネルギーが必要になります。
発案から完成まで苦労は伴いましたが、温故知新で唯一無二の払子が出来たと思います(^^)
また機会があればこういった創作仏具に挑戦したいと思います〇
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