ご依頼いただき阿弥陀如来坐像の修復をさせていただきました。
経年変化の具合と像容から制作年代は江戸時代と推測されますが、どっしりとした体躯に丸いお顔がどこか鎌倉時代の天才仏師、運慶の作を思わせます(^^)
今回の修復は、解体し塗装を落として再度組み立てていく完全復元修復をした後、古色(着彩により古くみせる技法)を施す修復になります。
威厳のあるご尊顔、玉眼もしっかりとはめ込まれています。
台座の蓮台はバラバラです。
これもしっかりとお直ししていきます。
ここからは修復工程を追っていきます(^^)
先ずは洗い作業。
お湯につけて解体しながら表面の塗装を丁寧に取り除いていきます。
洗い作業が終わりました。
解体すると多くのパーツで構成されていることがわかります。
乾燥させた後、仏身から組み立てていきます。
本像は体を前後で割り剥いで内刳り(空洞にすること)が施されています。
こうすることで後々の割れを防いだり、この空間に胎内物を納入したりすることができます。
右手は絶妙な角度で継ぎはいでいきます。
同時に台座も修復していきます。
蓮台の天板は虫による食害でかなり傷んでいたため新たに新調します。
元々の像は桧で造られているので新調する材も同じ桧を使用します。
蓮華の花の先も経年劣化で削れていたため新たに補填していきます。
ここからは玉眼の納入工程です。
お顔の裏側です。
玉眼をきれいに洗い再度はめ込みます。
玉眼をはめ込んだら瞳を描きこんでいきます。
真綿を詰めて玉眼を押さえる木型をはめ込みます。
木型をはめ込み竹釘でしっかりと固定します。
バラバラになっていた頭部も接合しお顔が完成しました〇
螺髪(らほつ)も摩耗しているのでもう一度彫りなおしていきます。
頭部と胴体を接合し、右腕は漆や金箔を施しやすいように取り外せるようにしておきます。
木地が組みあがりました!
ここからは塗りの工程です。
出来上がった木地の上に胡粉と膠を練った下地を塗布していきます。
そしてその上に砥の粉(土)と膠を練った下地を塗布します。
そこから砥石で下地を研ぎあげていきます。
この研ぎあげる作業によってはお顔の雰囲気が大きく変わってきます。
仏師はもちろんそうですが、塗師の職人さんも仏像を作り上げるセンスが必要なんです(^^)
下地が完成したら次は漆を塗り上げていきます。
右腕とその周辺は先に金箔を貼ってその後右肩を接合し、接合部分を馴染ませます。
これを「肩継ぎ」といいますが、こうすることで金箔を施しにくいところをきれいに仕上げることができます。
手間のかかる技法ですが、より完成度を上げるためにはこの手間は欠かせません!(^^)
「肩継ぎ」が終われば次は全体に金箔を施していきます。
金箔を施し終えました〇
このままでも神々しくて良いのですが、今回は古色で仕上げてほしいとのご依頼です。
少しずつ色をのせて古めかしい落ち着いた雰囲気に仕上げていきます。
一回目の古色を終えました〇
雰囲気としては50年くらいの経年変化といった感じでしょうか(^^)
この雰囲気もとても良いので、一度ご依頼主に古色具合を確認します。
もう少し古色の強度を上げてほしい、ということでしたので二回目の古色に入ります。
完成です!
100年くらいの経年変化を再現しました。
とても重厚感のある威厳に満ちた御姿になりました(^^)
今回は意図的に経年変化をつけていく「古色仕上げ」でのご依頼でした。
面白いのは古色の強度次第で10年ほどの軽度な変化や200年くらい経った状態など、経年変化を自由に再現できることです。
仏像は神々しい新調仕上げももちろん良いのですが、御安置される場所や趣向によってはこういった落ち着いた雰囲気にした方がよいということもあります。
古色技法に関してはこれまでいろいろと研究してきましたが、様々な材料や技法を駆使することで、どんな経年変化も意図的につけることができるようになりました。
これからも様々なご依頼に対応できるよう日々精進していきたいと思います(^^)
【宮本工藝修復実績】仏像修復 | 京都の仏師 宮本我休(GAKYU ガキュウ)
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