京都日蓮宗寺院、蓮久寺の諸仏を修復させていておりますが、その内四菩薩像の修復が完了しました。
これから順を追って修復作業を記していきます。
お預かりした時点での状態です。
膠のゆるみによる剥離や欠損部分も多く相応の経年を感じませます。
一旦すべて解体し、表層の塗装を除去して再度組み立て直します。
台座を解体していきます。
光背の軸は緩んで自立しない状態のものもあります。
洗い作業に向けて仏身各部を解体します。
表層の塗装を剝がしていきます。
木地を傷つけないように慎重に作業を進めます。
洗い作業を進めていくと、背面に接ぎ痕があることがわかりました。
その接ぎ痕を慎重に剝がしていくと、胎内から小さな巻物が現れました!
巻物は四体全ての胎内に納められていました。
小さいながらも技巧を凝らした造りです。
お寺様より許可をいただき慎重に開いていきます。
元禄七年と記されていることから御像は330年前に制作されたということがわかります。
およそ160cmほどの長さに小さな文字でびっしりと文字が書かれていますが、法華経のほかにも沢山の情報が記されていて、お寺の歴史を知る上でもとても貴重な資料になります。
背面と同様、頭部も割り剥ぎで造られていて中には玉眼が仕込まれています。
3㎜ほどの小さな玉眼を慎重に取り外します。
白毫も取り外します。
表層の除去作業を終え、乾燥期間を設けた後、いよいよ組み立て作業に入ります。
細かいパーツで構成されている腕もしっかりと接合し直します。
足らない部分は新補し、現存部と馴染ませます。
凹凸面は木屎(木くずと接着剤を練り合わせたもの)を充填し、表層を整えます。
欠損部分は現存部分に彫りを合わせて新調します。
両足が欠損していた一尊に新たな足を新補します。
ここから玉眼納入作業です。
玉眼を洗浄し再度彩色を施して納入します。
今回の玉眼は小さくとても薄いので慎重に洗い落としていきます。
玉眼を固定して、内側から新たに彩色を施します。
瞳のバランスが崩れないように時間をかけて精密に描き込んでいきます。
欠損していた髻も新補しました。
納入されていた経巻を再度納入し直します。
仏身が組み上がりました!
これから台座の修復です。
台座も沢山のパーツで構成されています。
台座は柱の部分など欠損している箇所も多く、それぞれの彫に合わせて補填していきます。
仏身、台座共に組み立て作業の後、漆塗り作業が完了しました。
古来から保護剤として使われ続ける漆。
天然由来の塗膜としては高い強度を誇り、また、角も立つので彫刻がより際立ちます。
束の間の漆黒、これから金箔を施し金色に仕上げていきます。
光背に使われていた鏡が経年によって黒くくすんでしまっていたので、今回鏡師さんにお願いして新調しました。
古い鏡は台座内に納入しました。
宝冠と胸飾りも欠けているところは補填し、金鍍金を施しました。
金箔を施し、最後は彩色作業です。
台座の一部や頭髪、御顔を仕上げていきます。
最後に白毫を嵌め込んで完成です。
完成です!
沢山のパーツで構成された本像。
欠損部分も多く、補填や組み立てにとても時間がかかってしまいましたが、これでまた後世に良い状態で引き継いでいただけると思います。
先に完成し納品させていただいた三宝尊の脇にご安置しました。
金色の諸仏が天井に映ってとても美しいです。
蓮久寺様の諸仏は他にも修復を進めていますが、ご本尊とこの四菩薩像同様、技巧を凝らした素晴らしい作ばかりです。
その分修復に長い時間を要していますが、引き続き気を引き締めて作業を進めていきます。
この素晴らしい文化と技術を後世に累々と繋げていきたいです。
【宮本我休修復実績】
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