飛鳥時代の偉人・聖徳太子像の造立に着手しています。
聖徳太子は言わずと知れた日本仏教の祖であり、太子なくして今の日本を語ることはできません。
私も長らく太子像造立を夢見ておりましたが、この度大変有難いご縁をいただき造立の運びとなりました。
謎に包まれた部分も多い人物像を、歴史資料や有識者の方からご意見いただきながら、令和の時代に太子の理想像を造り上げたいと考えています。
先ずは塑像原型を作成し、これから木彫に移っていきます。

太子の容姿といえばやはりこの「唐本御影」を思い浮かべる方も多いと思います。
この御姿はお札にも採用され日本一有名な太子像といっても良いかもしれません。
ですが、これは奈良時代の作であり、太子薨御後100年以上経ってから描かれていることから、そのまま写すには根拠が乏しいと考えています。
ではどこからヒントを得るのか。
実は太子をモデルに制作されたといわれる仏像が法隆寺に2体現存しています。
それは法隆寺夢殿の救世観音像と、金堂の釈迦如来像です。
この内救世観音像は太子薨御後117年後の造立(※諸説あり)であり、唐本御影と同様、制作年で棄却。
残るは釈迦如来像ですが、こちらは根拠に足りうる御像であると考えています。

理由は光背に刻まれた銘文に等身像として太子がお亡くなりになって翌年623年に鞍首止利仏師が制作した事が記されていること、
また、止利仏師は太子と生前親交があり、太子の面影を御像に投影することも容易だったろうと考えられるからです。
とはいえ、釈迦如来像をそのまま写すのではなく、当時の仏像としての形式を取り除き、上澄み部分を太子の面影として抽出する必要があります。
そうすると面長の御顔、真っすぐ綺麗に通った鼻筋、この二点が浮かび上がります。
その特徴を軸に想像を膨らませながら御顔を造り上げていきました。

私が想像する太子像です。
古代の方なので情報量が少ない中で大部分を想像で形作るしかないのですが、太子が制定した十七条憲法の第一条が「和を以て貴しとなす」とあるように、争いではなく、話し合い、協調こそが最重要と考えられた方ですから、人徳溢れる柔和な方だったろうと想像しています。
金堂釈迦如来像もアルカイックスマイルで造られていますが、太子像も少し口角を上げて柔和にほほ笑む御姿で制作していきます。

太子の衣装にも根拠があります。
中宮寺に「天寿国繍帳」という日本最古の染織工芸品が現存します。
これは天寿国に往生した太子の御姿を想い作られた刺繍であり、飛鳥時代の衣装が描かれた大変貴重な資料でもあります。

ここから京都風俗博物館が再現した太子の衣装が以下になります。

「唐本御影」の衣装とは大きく違いがあると思いますが、現時点の研究ではこの衣装が最も説得力のあるものと考えます。
この衣装の形を基に、極彩色で截金で文様を施し煌びやかな御姿に仕上げていきます。

ちなみに金堂釈迦如来像はおおよそ身長175㎝で作られています。
奇しくも私と同身長なのですが…(笑)、当時の成人男性の平均身長が160㎝程度であることから、今でいうと180㎝後半の大柄な方だったことになります。
高身長で穏やかなお人柄、想像するだけでワクワクしますね、、

唐本御影にも描かれる太子の御鬚ですが、こちらも面白い考察があります。
太子は生涯出家はなさらず、在家として仏教を信仰された方ですので、その証として髭を表すことは道理にかないます。
そこで京都大学東アジア文明教授の佐野宏先生にご意見を伺う機会を頂きました。
先生がおっしゃるには、日本書紀に太子の子である山背大兄皇子(

本像に使用する材は木曽桧。
木曽の森は樹種が豊富で競い合って育っていくため、とても強く美しい木に育ちます。
製材中は工房中に木曽桧の良い香りが充満していました。
彫っていてもとても心地よく、太子像に最適な材だと思います。


仏師としていつか現わしてみたいと思っていた聖徳太子像。
念願叶いいよいよ造立へ、後世規範となるような太子像に挑みます。
各工程ごとに進捗状況をアップしていくので、ぜひ一緒に完成までを楽しんでいただければと思います(^^)/
さぁやるぞ!
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