今回は御身丈9寸(総高約28cm) お寺様の念持仏として制作させていただきました。
左足を一歩前に踏み出した来迎の御姿です。
使用した材は木曽檜。
木目が細かく美しい木肌、木曽檜の良さを最大限引き出し、細部まで綿密に仕上げました〇
阿弥陀様の衣紋は薄い衣が体にぴったりと張り付くような表現が特徴です。
そのため、緊迫感と威厳を兼ね備えた阿弥陀様を現すには極限まで身をそぎ落とさなくてはなりません。
阿弥陀様はお不動様のような荒々しい動きや観音様のような煌びやかな装飾はありませんが、ただただ静寂で飾り気のないたたずまいには稚拙な彫刻技量を誤魔化せるところがなく、数ある仏様の中でも特に難しい仏様の一つであると思っています。
手足指縵網相(しゅそくしまんもうそう)。
阿弥陀様の御手には水かきのようなものがついていますが、これは一切の衆生を漏らさず救い上げるためといわれています。
私は阿弥陀様を得意とした鎌倉時代の仏師「快慶」を崇拝し研究しています。
快慶が残した阿弥陀様は極限まで無駄をそぎ落とし、ひりひりとした緊迫感と威厳に満ちたそれはそれは美しい御姿です。
私もそのような阿弥陀様をいつしか現してみたいと思うのですがまだまだ道のりは遠いです(^^;
そして今回は思い切って身をそぎ落としていったのですが、やりすぎてしまいました…。
と思っていました。
完全に失敗した、と思いしばらく傍らに置いて日々眺めていたところ、なんとなく形が見えてきて彫り進めると端正な御姿が現れてきました(^^)
そうして仕上げきると静寂で美しい阿弥陀様が〇
こうしたことは度々起こりますが「失敗した!」と思うことは実はチャンスでもあるのです。
以前にも書きましたが、彫刻は砂場で遊んだ「棒倒し」のようなもの。
砂で山を作り、そこに棒をさし交互に砂を取り合って棒を倒した方が負け、とう遊びです。
彫刻に置き換えると、砂を少し取っただけでやめることも良し、残り一粒砂を取ったら棒が倒れるというところでやめるも良しです。
快慶が残した阿弥陀様のような美しい御姿を求めるのであればやはり後者。
無駄をそぎ落とした仏様を目指すには一刀の狂いが命取りとなりますが、いつしか至高の仏を現すべく果敢に挑戦していきたいと思います。
本当に仏像彫刻は奥が深い…。
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